百人一首の秋の歌(17首)
出典の歌集で「秋」の部に収められた歌に、「雑秋」の部の小倉山の歌(26番)を加えています。四季の歌のなかで最も数が多いテーマです。
竜田川や小倉山の紅葉、雲間からもれる月の光、鹿の声、そして「秋の夕暮れ」。華やかな色彩と、もの寂しさの両方が詠まれています。
秋の歌の一覧
- 第1番天智天皇三字決まり「あきの」秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ秋の田のほとりの仮小屋は、屋根を葺いた苫の目が粗いので、番をする私の袖は夜露に濡れてゆくばかりだ。
- 第5番猿丸大夫二字決まり「おく」奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき奥山で散り敷いた紅葉を踏み分けて鳴く鹿の声を聞くときこそ、秋の悲しさが身にしみる。
- 第17番在原業平朝臣二字決まり「ちは」ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは不思議なことの多かった神代にも聞いたことがない。竜田川が紅葉で水を真っ赤にくくり染めにするとは。
- 第22番文屋康秀一字決まり「ふ」吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ吹くとたちまち秋の草木がしおれてしまうので、なるほど山風を「嵐」と呼ぶのだろう。
- 第23番大江千里二字決まり「つき」月見れば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど月を見ると、あれこれと限りなく物悲しい。秋は私ひとりに来たわけではないけれど。
- 第26番貞信公二字決まり「をぐ」小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ小倉山の峰の紅葉よ、もし心があるのなら、もう一度の行幸まで散らずに待っていてくれ。
- 第29番凡河内躬恒四字決まり「こころあ」心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花あてずっぽうに折るなら折ってみようか。初霜が降りて見分けのつかなくなった白菊の花を。
- 第32番春道列樹三字決まり「やまが」山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり山あいの川に風がかけたしがらみは、流れきれずにたまった紅葉であったよ。
- 第37番文屋朝康二字決まり「しら」白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける白露に風が吹きつける秋の野は、糸に通していない真珠が散りこぼれるようだ。
- 第47番恵慶法師二字決まり「やへ」八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり幾重にも雑草の茂った寂しいこの宿に、訪ねてくる人はないけれど、秋だけはやって来た。
- 第69番能因法師三字決まり「あらし」嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり嵐の吹く三室の山の紅葉が散り、竜田の川に流れて錦を織りなしている。
- 第70番良暹法師一字決まり「さ」さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこも同じ 秋の夕暮れ寂しさに耐えかねて宿を出て眺めてみたが、どこも同じように寂しい秋の夕暮れであった。
- 第71番大納言経信二字決まり「ゆふ」夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろやに 秋風ぞ吹く夕方になると門前の田の稲葉が音を立てて鳴り、蘆ぶきの粗末な庵に秋風が吹きわたる。
- 第79番左京大夫顕輔三字決まり「あきか」秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ秋風にたなびく雲の切れ間から漏れ出る月の光の、なんと清らかで澄んでいることよ。
- 第87番寂蓮法師一字決まり「む」村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れにわか雨の露もまだ乾かない真木の葉のあたりに霧が立ちのぼる、秋の夕暮れよ。
- 第91番後京極摂政前太政大臣二字決まり「きり」きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝むこおろぎの鳴く霜の夜、冷たい筵に衣を片敷いて、私はひとりで寝るのだろうか。
- 第94番参議雅経二字決まり「みよ」み吉野の 山の秋風 小夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり吉野の山に秋風が吹き、夜が更けてゆく。古き都の里に寒々と、衣を打つ砧の音が響いている。